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2009年 11月 23日
「中学の時はあまり意識しないで男の子に触れていたのに、
高校に上がってから急に周りの目が気になり始めたの。 気になる男の子の手をなんだかんだと理由をつけて触る事も 中学の時までは平気だったのに、高校生になったとたん、 それが特別の行為のように見えて、不思議に手を引っ込めちゃうんだよね。」 ああ、僕の同級生もそうだったな。 恥ずかしがりやとあっけらかんとした性格しかなかったような女の子達が 急に男の視線を気にし始める。 というか、存在に警戒し始める感じだった。 僕は何もしやしないのに、それは中学の時から知ってるはずなのに、 まるで互いに生まれ変わってしまったかのような感覚になっていて、 かえってこっちが気恥ずかしかったり、緊張したりするんだ。 あれは何の境界線だろうね。 2009年 11月 22日
若木さんは三年生で僕の先輩だったが、
三年生になってからサークルに入ってきた。 昼休み、間が悪く僕は若木さんと二人になってしまう。 若木さんの事は嫌いじゃないが、どうも物静かで話のきっかけがなく、 苦手な感じだと思っていた。 しかし僕は沈黙の方が苦手だった。 若木さんは、どうして三年生になってサークルに入ろうと思ったんですか? 前に何か入ってたサークルとか同好会とかありましたか? ゼミとか、忙しくないですか?どんなことやってるんですか? 若木さんは黙って僕の方を見ていた。 僕はすこし視線をそらしていたが、あまりに強く見つめるので 根負けするように、一瞬その目を見た。 それが合図のように彼女は言った。 「ひとそれぞれでしょ。」 これ以上聞くな、ということなのか、僕は嫌われているのか よくわからないが、年上の女は怖いな、と思ったのであった。 2009年 11月 21日
音楽番組で流れたPVにはパンツ一丁の男が
汗を振りまきながら歌を歌っていた。 僕たちは黙ってそれを観ながら電気店の一角に立っていた。 ふいに雅人くんが口を開く。 「見る側も見せる側も羞恥心を持たなくなっている。 だからこんな映像を見せられても何にも嫌悪感を抱かない。 そうしたのは、そうなったのは、一体何でどんな理由なんだろうね? むしろいまだにこんな映像で眉をしかめているヤツを見ると 俺は皮をかむった垢だらけのイチモツを想像するよ。 何をそこに隠してやがるんだろうって。 もう服を脱ごうが股を開こうが奪われない大切な物を 人は体の中に包み込めるようになったのかもしれないな。 こうは考えられないかな。 もう誰にも入る事の出来ない世界を頭の中に構築する事に 人間は成功しているんだ、って。」 2009年 11月 20日
あー、じゃあ黙っとけば、とか言っちゃえよ、とかそういうレベルもなかった。
だって彼女と僕は別に悩みを語り合うほどの間柄じゃない。 間違えてるのは彼女だ。 話が続かなくなって僕が立ち上がると彼女も立ち上がった。 「じゃあね。」 彼女は複雑な表情で言った。いや、もともとこんな顔だったかもしれないが。 手放したくなければ告白できるだろうよ、 でもそんな相手はこれから行く土地の誰かかもしれないよ。 彼女は無表情に僕の戯れ言を聞いていた。 それから一度頷いて去っていった。 展示教室に戻ると 案の定僕は相方とその話を聞いたかわいそうな男子高校生どもに、 今あった事を話さなければならなかった。 2009年 11月 19日
彼女にソフトクリームをおごりながら少し相手のことを尋ねた。
県内の中位から上くらいの高校に進んだ彼女は友人と一緒にウチの学校の文化祭に来る予定 だったが、直前で友人がキャンセルをした。 予定が空いてしまうのも嫌だったのでこうして来てみたということらしい。 「実はね、県外に引っ越すので転校しないといけないんだ。」 彼女は言ったが、僕には何の感情もなかった。そう、とだけ答えた。 ここでどんな想像も働かなかった。 漫画みたいに告白されても唐突すぎるし現実味がなかった。 僕の中学時代にそんな伏線もなかったし、緊張感も湧いてこない。 「今の学校に好きな人がいるんだけど、気持ちを言えないの。」 それは少女漫画のあらすじを誰かから聞いているようだった。 僕には何の関係もないことで、しかし誰かが苦しんでいる事だけが分かるのだが、 まったく興味が持てないのだ。
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