IE9ピン留め

セカイであそべ!

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嘘日記、でたらめですよ。

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他人が信じてることを自分が信じられなくても僕は生き方を変えられない。
# by trash-s | 2012-12-31 00:00
その夜に夢を見る。
僕の失いたくなかった人が僕に微笑みかけている。
そして遠くへ遠くへ消えていく。
僕は喉から血が噴き出す勢いで叫んでいるつもりだが、
その声は届かない。
僕の声も僕の耳に響かない。
神のサイレン、天の怒号。
そんなもので僕の声はさっぱり消え去ってしまう。

僕は自分の叫び声で目を覚ます。

汗びっしょりの肌を夜の風が冷たい手でなでる。
吹き出る涙を僕は止めることが出来ない。
この世界を恨まないと、誰のせいにもしないと、
自分で決めたはずなのに、怒りと恨みと後悔がこみ上げてくる。
ふと顔を上げるとリコがタオルを持って立っている。
おおお…ううぐ…。
獣じみたうなりしかあげられない僕がまたうつむくと、
リコはそっと下からタオルを僕の顔に押し当てる。
僕の頭はその細腕にそっと抱きかかえられる。
リコの腕は僕の耳を塞ぎ、まるで外から断絶されたような安心感。
腕を伝うようにリコの声が聞こえる。
「何も考えず朝まで眠るです。
明日の朝の光を見たらきっと何もかも忘れられるから。」

夜の闇は自分を映し過ぎた。
まだこの状況を整理できていない僕を映し過ぎた。
リコの言う通り、明日の朝日がすべてを洗い流すんだろう。

僕は、いつのまにか眠っていた。
# by trash-s | 2012-01-29 23:52 | 星の胞子
荒廃した街をリコと歩く。
未だに僕らは希望を持って歩いている。
この地上のどこかに誰かがいることを。
願わくばその人らも僕らを探して歩く希望を持った人であってほしい。
それは少しわがままな願いだけど。
輪の上を反対方向に歩いてきていつか出会うように僕らは出会いたい、喜びあいたい。

世界をこんなにした誰かは、きっと僕の知らないような偉い人で
その彼が、何かを間違ったのだ、そう僕は思っていた。

だから僕は正しい、と思おうとした。
思おうとして出来なかった。
世界がこんな風になる前に、僕は地下室で眠ってしまった。
無責任に。
何かが出来たわけじゃない。

僕はただの会社員だった。ただの一般市民といううやつだった。
けれどそれは僕を正しいに導かない。

彼が正しくないなら僕もまた正しくない。
彼が間違ったなら、僕もまた間違った。
世界の有り様に正しいも間違いもなかった。

誰かのせいではないこの世界で僕はリコと歩く。
# by trash-s | 2012-01-28 21:35 | 星の胞子
彼女には、文才があり、学生のときから言葉を弄り、組み立てることで
たくさんの詩や歌を作り、小説を書いた。
その感性は詩人であった祖父のものなのかとたずねたこともあったが、
「わたし、お祖父さんに会ったことないのよね。」と言って笑った。
性格も明るく、誰からも好かれた。

皆が彼女は言葉の泉を持っているかのように思い、僕もその一人だった。

99年の9月に僕と彼女は交際を解消した。
原因はあったが、直接の原因ではないように感じた。
互いに互いを見なくなった、とでも言うのか。

一つ気になったのは、彼女の書いた物語が雑誌に載った時のセリフ。
「あーあ、仕方ないのか。」
何が仕方ないのか聞いても答えは無かった。
彼女自身どうしてそんなことを言ったのか説明できないようだった。
「離れようと思えば、離れられたはずなのに、結局言葉を考えることから離れられなかった。」
と残念そうに彼女は言った。
君の才能が素晴らしいから仕方ないんじゃないのか。
僕がそう言うと彼女は目尻をつり上げた。
「そういう意味の仕方ない、じゃない。君に、何が分かるの?」
僕は言ってはならないことを言ったと思い、押し黙った。

引越をした。
8年前に書かれた彼女の小説、その書評の載った雑誌。
『軽快な文章にセンスを感じる。時に軽すぎると思われる言葉には人の心をすり抜ける力がある。まるで空気のように肌にしみ込む。』

僕らは往々にして自分と異なる存在を好む。
自分には無いものを持っている者をうらやむ。
自分が感じ得ない感覚を感じている人を物珍しく見つめる。
もしも「軽快」と評された彼女の言葉が、彼女にとってはものすごく重い言葉だったとしたら?
重みに耐えかねて、紙に書き出すしかないほど苦痛に歯を食いしばって出したモノだとしたら?

評価の正否を言っているのではない。
誰にどんなことを言われようと、「仕方ない」ほど自分の紡ぐ言葉が重かった彼女。
書かなければ頭がいっぱいになってしまうだろう。
僕は知らずいつからかそのことに気が付いて、彼女の言葉を耳に入れなくなった。
僕には軽くしか感じられないその言葉の重みを、彼女と共有することが出来ないからだ。

それは彼女だけの重さだろう。
僕だけでなく世間のほとんどの人が彼女の言葉を「軽い」と評した。
彼女はひとり長い道を行かなければならない。
自分だけが感じるその重さを背負って歩いてゆくのだ。

そして僕は意味も無く昔した会話を思いだす。
君の手はずいぶんしわしわだね、まだ若いのに。
「そうね、どこか体でも悪いのかしら。
病気って健康そうでも体の一部に出るってことあるじゃない?」
# by trash-s | 2011-10-30 23:51 | おとな未満
「お夕飯の匂いがしたら、だれか出てくるかもしれません。」
とリコが言った。
僕の見た所、この付近に誰かいる様子はなかった。
それどころか、鳥も飛んでいない。
灰が雑草すら見つけさせてくれない。

「スープを作りましょう。暖かいスープを。」
底のへこんだ座りの悪い鍋を見つけてきて、がれきの石で固定した。
固形燃料を集めて火にかける。
誰も使わなくなった大量の物資は、全部僕らのものだった。
それは僕らが灰の下に眠る日になっても使い切れない量のモノだ。

日が落ちた頃に、スープは出来上がり、
僕らは空腹を満たした。

誰もやってこなかったね。

僕は少々、遠慮がちに言った。
リコが気にしているといけないと思って。

「え?何のことですか?」

リコはあっけらかんと言った。
それからしばらく黙って、あ、という何かを思い出した顔をした。

「そ、そうですね…。またそのうちどこかでスープを作りましょう。
なに、そんなにがっかりすること無いですよ。」

なんで僕はリコに慰められているんだろう?
……心配して損したよ。
# by trash-s | 2011-07-25 23:33 | 星の胞子
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