1854.繰り返す間違い

燃えないゴミの日なのにうずたかく積まれたCDケース。
ゴミの分別を知らないか、はたまた勘違いか。
それにしても目立つ。
ひどくくたびれた厚手の紙袋に無造作に入っている。
いくつかはケースが割れ、いくつかは中のCDが飛び出し、
誰かが魂込めて作ったものとしてはワゴンセールよりひどい扱い。
その中に彼のCDを見つけたときは、全身を何かが駆け抜けた。
もう五年以上前になるか。
僕と彼は友人だった。
とはいっても友達の友達、飲みに行くと顔を合わせる程度の知り合いという友人。

そのCDのケースは半分割れて、中の紙の冊子は乱暴な仕舞い方に
表紙ページの半分まで裂けている。
歌の内容は忘れてしまった。
彼は彼なりに命を削った作品だったことは覚えてる。
いい加減な男で、知人をあたっては金を借りてるだとか、
女を孕ませただとか、酔っぱらって誰かを傷つけたとか、
そんなどうしようもない噂ばかり流れてきた。

後悔なんかしただろうか。
金は返しただろうか、あの頃どおりの男ならそれも望めないだろう。
孕んだ女は子供を産んだだろうか、その子をかわいいと思っただろうか。
誰もがどうしようもないと思う男は、今どうしているだろうか。
そうして僕がゴミ捨て場から立ち去ろうとした時、
不意に昔の声を聞いた気がした。
「間違いを犯さないやつなんていなんですよ。
カツ丼の気分だったのに、カレー食っちまうことだって間違いなんですよ。
だったらカレーでもいいやなんて言ってたら、間違いは間違いのまんまなんです。」
何言ってるんだろう、と昔は思った。
でも思い返して見ると、意外と彼の言ってることは正解だったかもしれない。
どっかの曇天の下、僕も彼もいまだ間違いを犯したまま
生きているのかもしれない。

by trash-s | 2012-04-19 18:53 | ある日の出来事