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1860.もっと光を

久美姉さんが一人暮らしを始めた頃、僕の部屋に来ることが多くなった。
…おかしいって?
おかしいことなんて何にも無かった。
僕も始めはおかしいと思ったよ、だから尋ねた。
「夜、帰ってくるでしょ?
電気が消えてるから部屋が真っ暗なの。」
で?
「怖いから。」
は?
「怖いでしょ、真っ暗な部屋。
前にアンタだって言ってたじゃない。
鍵っ子で遅くなって家に帰ると両親もいなくて
家全体が暗くて怖いって。」
いやそれは小学生の頃の話だから。
「暗闇を怖がるのは人間の習性なの。
だから仕方ないのよ。
仕方なくてここに来るしかないのよ。」
いやさっさと帰れよ。
何のための一人暮らしだよ。
何のためのプライベートだよ。
つかこっちは一人暮らしなんてうらやましいんだよ。
見せつけるくらいなら帰れっ!
久美姉さんは僕の鼻先に鍵を出す。
「これで電気付けてきて。」
はああああ?
「タンスとか見てもいいから。」
別にいらねぇから。
見飽きてるから。
いつもウチ来て風呂入って下着でおっさんよろしくうろつき回るからなんのありがたみもねーから。
「じゃああたしのいない時に使ってもいいから。」
……。
…………それはいいかもしれない。

そのかわりね、と久美姉さんは続ける。
「明かり付けてね。
ほんとうにね、怖いんだよ、暗闇って。」

by trash-s | 2012-04-27 23:48 | 久美姉さん