1884.張り付いた二つの心

去年の今頃は、だいぶ僕は腐っていた。
浪人が確定して、推薦の取れていた彼女はあっさりと
シャッターを閉めて「彼女屋」を閉店させた。
元々身分違いのロミオとジュリエットを一年もやってられないと
思っていたので、別段悲しくなかった。
と思っていたが、実際には傷心ではあった。

彼女と会わなくなって、電話の回数が増えた。
メールはほとんどなかった。
互いに他人の声が聞きたくなるタイミングがあるらしく、
僕の方からすることもあれば彼女の方からすることもあった。
復縁を迫ることもまた迫られることもなかった。
よく知った他人を、便利に使っていただけなのかもしれない。
愚痴を言いあうこともなかった。
話の内容はいつもたあいのない近況報告。
細かな出来事について自分の意見を挟むこともなかった。
ただ相手の話を聞くだけ。

僕が大学受験に合格した時、彼女は一言「よかったね」といい
僕は「ありがとう」と返した。
それから4月には新しい生活ですこしわからないことを
彼女に尋ねたりした。
そしてそれが最後の電話になった。
「これで終わりにしよう」とか「私、結婚するんだ」とか
具体的なピリオドを示すものは何もなく、
ただ電話はかかってこなかったし、僕もかけようと思わなかった。

ああ僕たちはやっと別れたんだと最近になってようやく分かった。
張り付いた心をゆっくりと剥がし、二つに分かれた、
そんな感じだった。

by trash-s | 2012-05-22 08:23 | おとな未満