1889.信じるべきはなんでもない絆

どこかのマンションで痴話喧嘩の声がしている。
帰り道、出会った救急車は二台、助けを求める人の元へ向かう。
赤く点滅する光。
酔っぱらった同い年くらいの男の子が二人。
座り込んで壁にもたれたまま動かない。
新入生歓迎会かな、僕にも覚えはある。
風が暖かくなってきた。
僕の足取りは、まあまあしっかりしている方だ
サークルの飲み会にもそろそろ慣れてきた。
僕は一人家に帰る。
痴話喧嘩が気になる人は誰もいない。
救急車が通っても皆自分とは関係ないって顔してすぐに感心を失う。
酔っぱらいに興味はない。
全ての人に興味がない。
みんなが誰にも興味がない。
興味を持ってほしくないというのは、ただの強がりで、
本当は誰かに見てほしいという気持ちで頭はいっぱい。
離れ過ぎて孤立して、近づき過ぎて失敗して、
気が付けば「俺は人間嫌いだから」なんて威張ってる。

「おい、ちゃんと歩けてるか?」
聞き慣れた声。
久美姉さん。
振り向いたら、よそ行きの格好した久美姉さんがいた。
「くたびれた背中に見覚えあると思ったらやっぱりあんたか。
どした?
サークルの帰りか?」
酔ってるでしょ、久美姉さん。
「…あー、酔っぱらいに言われたくないなぁー。
大丈夫だもん、ここであんたに会えたから。
ちゃんと帰れるんだよ。」
そーいうの大丈夫って言いませんよ。
久美姉さんがつかんだ僕の肩に爪が食い込んで痛い。
まったく、しようがない。
人間て奴はしょうがない。
難しいこと考えなくても付き合ってくれる人たちに
そんな人たちに知り合わせてくれた神様に、感謝。

by trash-s | 2012-05-27 19:55 | 久美姉さん