1903.ノーミスクリアが何だって言うんだ

近くの小学校が休みなのか普段より静かだった。
猫が食べ物をねだる声を上げている。
季節は暖かくなり始めて、今日は暑いくらいだ。
妻が買い物に出かけると言って、さっき家を出て行った。
家の中も静かだ。
テレビはさっき消してしまった。
パソコンも仕事を終えたら電源を切った。
熱帯魚の世話。
言いつけられていた洗濯物の回収も終えた。
買ったばかりのゲームでもやろうか。
しかしあれは次の仕事を片付けたらやろうと思ってたんだっけ。

電話だ。

「平凡な生活を満喫しているようじゃないか。」
知らない声がそう言った。
いやしかしどこかで聞いた事ある気もするな。
「積もる塵に足を取られて動けなくなることもある。
どこからともなく飛んできた石に命を奪われることもある。
気をつけるんだな、とはいっても気をつける事さえできないのだけどな。」
何を言ってるんだ?
「物事は突発的に起こってるんだ。
誰もが予定通りに生きてるつもりで、突発的な出来事にその都度
対処できているに過ぎないんだ。
驚くなよ。
どんなことが起こっても驚くんじゃないぞ。」

電話が切れるのと同時に、
救急車のサイレンの音が聞こえた。
胸騒ぎがした。
その時妻が帰ってきた。
電話の前で立ったままの僕を見て不思議そうに首を傾げた。
「電話?」
思いだした。
あの声。
僕の声だ。
自分の声だから気が付かなかった。
小さい頃に聞いた、あの好きになれない声だ。

by trash-s | 2012-06-10 22:05 | ある日の出来事