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1908.誰かを引き受ける余裕なんか無かった

季節は春から夏に移動中、
夏が嫌いな僕は、この各駅停車の四季の移り変わりを誰か
飛び込み自殺で止めてくれりゃあいいのになんて
くだらない、そして不謹慎なことを考えてる。
僕が飛び込みゃそれでいい。
もしもそれで世間が、季節が、時間が、止まってくれるなら。
ただ僕の時間が止まるだけなら、僕の生きた理由もなくなっちまう。

若い女の子たちがまぶしく薄着に早変わりして、
綺麗な肌をさらけ出す。
しばらく彼女と会ってない。
しかし三ヶ月も会ってない女を彼女と言っていいものか。
肌の感触も、胸元の甘い香りも、唇のぬめりも
もうわすれてしまった。
電話にはほとんど出ない、メールは帰ってくるのが遅い。
もう男ができたと思うのが、大人の発想だが、責める勇気も気力もない。

夕方はこの季節まだ明るい。
路上で歌を歌う男の子たちのバンド。
少し離れて別のスケッチブックを立てかけた女の子はひとりで歌ってる。
すきなことやれていいね、
なんて皮肉はとうの昔に置いてきてしまって、
それでも何か自分らしきものを残せる力をうらやましく思ってる。

僕のケータイが鳴って、それが彼女だと分かると手が震えた。
何か大きな事がやってくるような気がした。
想像出来る事を、どう考えても受け止める事が出来ない気がした。
この人ごみの中で、自分一人立つのが精一杯だったのだ。
それでもなんとか人の流れをかき分け、路地に入る。
そっと電話に出る。
「もしもし?」
知らない女の声。
でも僕が彼女の声を忘れているだけかもしれない。
「○○さんでしょ?××ね、倒れたんだよ!?今どこにいるの?
ずっとね、鬱病で会社休んでるの。
私は同期の□□ってものだけどね、…ちょっと聞いてる?
自殺未遂みたいなことしてね、危ないんだよ。」


録音部分が途切れたカセットテープの再生音みたいに
サーという曇った音が頭の中でした。
喧噪も、路上の下手な歌も、急いで走るパトカーの音も、
なんにも聞こえなくなっていた。
自殺?未遂?
それは僕のせいなのか?
僕がいけないって言われるんだろうか?
僕だって、そんな余裕はないんだよ。
誰か言ってやってくれよ、
僕はもう限界だって。
過呼吸になって息が出来ない。
流れ落ちるよだれも涙も僕の罪をすすがない。
この僕のどこに十字架を背負う力が残っていようか。

by trash-s | 2012-06-14 23:45 |