1909.ささいな自己愛が空を青く見せる

今度のボーナスはだいぶ減るらしい。
会社のひとが噂してた。
こんな時代に仕事があるだけ感謝しなくっちゃ。
そんなふうにお母さんは言ってたけど、
日々の仕事の忙しさにため息が漏れてしまう。
今の私は、正直なんとか息継ぎして泳いでる泳ぎの下手なひとだ。
ちょっと波に揺らされればあっという間に溺れてしまうだろう。

(卵焼き、上手くできた。)

もう屋上でお弁当食べても寒くない季節になった。
就職して自分でお弁当作るのにも慣れた。
そうやって作る卵焼きの味は変わっていくのに、
私の日々は平凡としてむしろ、時々追いつめられたりしてる。
寿退社していった先輩が上手くいかなくて別れたって
同僚の子たちが話していた。
そして何故かその先輩は今、駅前で歌を歌ってるという。
学生の頃バンドを組んでたという話はすこし聞いたことがある。
その想いが再燃したんだろうか?
会社を辞めて、結婚して、離婚して、歌を歌ってる。
私にはちょっと考えられないほど遠い話だ。
でもやっぱりそういう人はうらやましいな、と思う。
私は私の友達のことを思いだす。
今度こっそり先輩の歌を聴きに行ってみようか。
きっと顔なんて覚えてないだろうけど、こっそりと。

(空が綺麗だなぁ。)

水の中に落とした白い絵具が流れてのばされたような雲が
青い空に漂う。
ため息は止まらない。
心は泣いている。
足取りは重く、愚痴や不満を受け止めてくれる人もいない。
先行きは見えない。
それでも自分のすることを肯定出来れば気が楽だ。
たとえば自分の為のお弁当を作ること。
先輩の歌を聴いてみようと思うこと。
空が綺麗だと思うこと。

それを私の好きなことだと思えるから。

by trash-s | 2012-06-15 23:14 |