人気ブログランキング |

1923.僕は僕の名前をやっと好きになったよ

繁華街にはタイムセールを叫ぶ声が響いていた。
ドラッグストアの店員が脚立に登ってなにやら叫んでいる。
それが何の単語か分からないのは、彼の滑舌が悪いんじゃなくて
僕の知らない、化粧品の商品名だからだ。
居酒屋の店員が夕方早くから客引きをしている。
ステージから出てきたままみたいなバンドマンが
ティッシュを配ってる。

テレビに映し出されたのは、話題の政治家たち。
言いたいことを言い、都合の悪いことを隠し、
自分だけは正しいことを言ってるつもり。
舌鋒鋭く何かいいことを言ってるつもり。
巨大掲示板に現れるかまってほしい人と何ら変わらない。
その証拠に、多く人は彼らの言葉を重要だとは思ってない。

私たちのこと。
名も知れぬ、知られぬ、一般大衆としての私たちのこと。
声上げぬ人、最初に上げた人も大衆だけれども、
無理して目立つことをしなければならない人。
そうでない人はここにいる。
どこにでもいる。
静かに生きている。
時々、孤独に耐えかねて叫び声を上げたいと思ってる。
しかし絞り出しても声は出ず、何も出ず。
テレビの音を消すことが怖い。
一緒に自分も消えてしまうとさえ思う、己が存在感の薄さ。


それでもいいか、と僕は歩く。
黙って、誰にも知られなくても、もう誰も覚えてさえいなくても、
歩かなくていい理由にも、
歩かない理由にも、
なるわけでなし。

by trash-s | 2012-06-29 23:29 | ある日の出来事