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1928.たのしくて、かなしくて、僕はどこへいくのかな

最初は楽しかった。
似たような立場の人間が集まって、自分のことを話したりした。
同じ問題を抱え、同じ空気を吸い、同じ孤独を抱えていた。
中でもリーダー格の男の子に惹かれた。
まるで同じ境遇とは思えないほど、彼は明るくよく喋った。
その気持ちを知ってか知らずか、彼は僕によく接してくれた。
いろんな話をしてくれて、僕の縮こまった気持ちを外に出した。

僕は、昔からおとなしい子だった。
何も喋らなければそれだけでいじめの対象になったりした。
どうして自分がそんな目に遭うのか分からなかったが、
考えても分からないことは考えないことにした。
僕は、頭が悪かったから、長い時間考えるのは苦手だった。

みんなが仲間だと思い始めた頃、
僕は気が付くと、のけ者にされていることに気が付いた。
彼はいつも通り接してくれるが、他の仲間たちからは避けられているみたい。
分からなかった。
また、分からなかった。
僕は、彼と比較的仲のいい仲間に、そのことを問いただした。
答えは簡単。
僕が、彼を独占していると、仲間たちは思っているのだった。
僕が、彼のお気に入りだから、優遇されていると思っていたのだ。
とんでもない話だ。
問いつめた仲間は、それでもいくつかの事例を挙げ、
仲間たちが決して一度や二度の誤解でそう言っているのではないと説明した。
愕然とした。
それから仲間は僕に追い打ちをかけるように言った。
「彼も、みんながそう思うなら、少しアイツとは距離を置くよ、と言ったよ。」



気が付いたらまた僕は一人になっていた。
やっぱりどっか僕は壊れていたのかもしれない。
そのことを忘れさせてくれたのが彼で、
仲間たちは、それに気が付いたんだ。
僕はナイフを取り出して、背中まで伸びた髪を手で束ね、
刃を当てた。
一度では切れなくて、何度も何度も切りつけて、やっと頭から離れた。
そうしてわんわん泣いた。

by trash-s | 2012-07-03 22:28 | ヒナタさん