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1940.どんな困難にもすぐ慣れる

日々の生活が圧迫されるように、
湿気を含んだ風が入り込み、
僕の呼吸を息苦しくする。

過ごしにくい季節がやってきた。

サンダルを足に引っ掛けて、
太陽が顔を出した炎天下を歩いてゆく。
差し入れに買ったサイダーは、すぐに温くなってしまうだろう。
おばちゃんがアスファルトに打ち水をしている。
陽炎が揺らめいておばちゃんが消えるように見えた。

いかんね、真夏でもないのに、もうこの暑さだよ。

電力需要がどうこうとか、
エコとか、そういうのもう聞き飽きた。
驚いて気を引き締めて飽きて慣らされて、
そんな文明のサイクルで人間生きて来てる。
どんな困難にも立ち向かったんじゃなくて、
どんな困難も飽きて慣れてしまっただけ。

僕は鍵のかかってない扉を横に開く。
カラカラカラカラ
蒸した空気に、乾いた軽い音が心地いい。

Tくん、いるー?

家主の名前を呼んだ。
耳をすますと壊れかけて音が鳴り始めた扇風機の
音がちいさく聞こえた。
僕は黙って上がり込む。
二週間前にTくんから「エアコン壊れたみたいだ」と聞いた。
それでこの暑さ、へばってるだろうとやって来たのだ。
部屋を開けるとTくんがいた。
机には向かってる。
汗だくの顔を僕に向けて、口を動かしているが、何を言ってるか分からない。
壁には、エアコンが取り付けられていた跡。
僕の持って来たサイダーをあおりながら、
「修理が終わるのは来週だ。
それまで俺は生きてられるかな。」
とTくんは言った。

by trash-s | 2012-07-14 23:36 | Tくん