1946.僕は選ばれた

僕の籤は当たっていた。
義弟の籤ははずれだった。
僕は自分の当たりを義弟に譲るつもりだった。
しかし係官がそれを止めた。
「それはできません。
この籤は、遺伝情報を元に行われているものです。
あなたの遺伝子が弟さんより優れているという証拠です。」
次の瞬間僕は係官を殴っていた。
義弟が僕を後ろから抱えて押さえ、
係官には他の係官が支えとして集まっていた。
彼らは僕に何の手出しもしなかった。
むしろ
慣れているといった様子だった。

なぜだ。
なぜ係官を殴ってしまうような僕が当たりで、
誰にでもやさしい義弟がはずれなのだ。
そんなこと、誰が決めているんだ。
コンピューターか。
僕なんかつまらない人間、生き残らなくていい。
本当に残らなきゃいけないのは、協調性のある義弟のはずなのに。

「…義兄さん、ウチには遺伝病の因子があるって、
父さんから聞いたことあるよ。
姉さんにもきっとあったと思う。
姉さんが今生きていなくてよかった。
そしたら僕は義兄さんを止める自信はないよ。」
義弟は笑った。
「生きて、義兄さん。
僕と姉さんの分も。」


それはつまらない夢だった。
あれからどれだけの時が経ったのだろう。
何百年経っていようと、記憶にないものは時間として刻まれないし、
僕が機械の中で眠っていた時間は、無かったのと同じこと。
いつでも彼女と義弟のことは思いだすし、
僕は今生きていることで罪を償ってると思ってる。
絶対に死んだりするものか。

by trash-s | 2012-07-23 23:48 | 星の胞子