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1960.女の子は必ず綺麗になる

若い頃の悩みは、狭く深い。
僕は二十歳を過ぎた頃、もうそう思うようになっていた。
2、3年前の悩みが、嘘のように小さく見える。
それは僕が「はじめて」を通り過ぎていった証拠であるし、
「はじめて」のことは本人にとっては
この上なく、恐ろしく、緊張し、不安なものだ。
嬉しいことには、天にも昇るように高揚するし、
辛いことには、世界が終わるかと思うほど絶望する。
この繰り返しなのだと思ったとたん、僕の感性は起伏を失う。

「久美さんはすごく綺麗でうらやましい。」
美琴ちゃんがぽつりと言った。
美琴ちゃんはあんなのになりたいの?
そういうと美琴ちゃんは僕を睨むように見た。
「ひどいんだ。」
ひどくないさ。
知ってるだろ、僕がいろんなことに利用されてるの。
「…知ってるけど。
そういうのって綺麗だし、嫌いじゃないからでしょ?」
なんかずれてるな、と思った。
嫌いじゃないけど、綺麗だからとは思ったことないよ。
まぁ、ああいうひとは、自分の顔で何かと便利に生きられるだろうけど。
実際に久美姉さんはそんなに器用ではないけど。
だから僕はこき使われるのだ。
「おっぱいだって大きいし。」
うらやましいの?
「うらやましい。
ダメかな、こういう気持ち。」
ダメじゃないよ、みんなそうだよ。

誰かがそういう気持ちはよくないって言った。
他人を見て、自分にないものをうらやむのは非生産的だって。
自分自身を見つめるんだって。
そんな器用なこと出来たら始めから悩んだりしないんだよ。
他人はうらやましい。
何で出来てるかわからないものをたくさん持ってる。
そうして仕方なく自分の中を引っ掻き回す。
それこそ何か無いか、何もないところを一生懸命に。
そこで見つけた自分の小ささにまた絶望する。
でもそれを大事に持ってれば、
大事にしなくたっていい、なくさなければね、
ある日、大きくなってたりするんだ。
あと数年待ってみなよ。
美琴ちゃんも、
久美姉さんとは違う、綺麗な女の子になるからさ。

by trash-s | 2012-08-06 02:34 | 美琴ちゃん