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1962.感謝してます、女神様

六畳間の窓を全開に開け放っても
肌にまとわりつく暑さはぬぐえなかった。
遠くに蝉の声、家の中はしずかだ。
彼女はアルバイトに出かけていない。
大学生の夏休み、僕は部屋にこもってゲーム三昧。
女は金がかかるからしょうがないよな、なんて言って
送り出したけど本音は、ひどく焦っていた。
彼女と、僕との、人としての距離。
僕はどっかで就職出来たら逆転だ、って思ってるクズ。
彼女より、いい仕事に就職できればいいんだって
結論を後回しにしてるけど、本当にそれができる自信は無い。
今は本気出してないだけなんて言って、
彼女の時給950円の仕事を見下してる。

僕は日給マイナス1000円のお仕事。
社会の何の役にも立たない。
高校生ほど未来も無い。
社畜か産業廃棄物のどちらかしか残されてない。

泣きたくなってきてゲームをやめて
電気も付けず、たたずんでたら彼女が帰って来た。
「あー、そりゃクズだわ。
救いようの無いクズだわね。
っていうか甘いよね。
彼女いて学生で、仕送りもらってて、
どんだけ充実してるんだって。」
そう言って彼女は笑った。
「あんたは人間がクズなんじゃないよ。
悩みがクズなんだ。
そんなもの、さっさと捨てなさいよ。
じゃないともう一緒にいてあげないから。」

僕はきっとこのひとには感謝しなきゃいけない。
これから先も。

by trash-s | 2012-08-08 23:35 | おとな未満