1974.水を飲む?

僕は何もない大地を歩いてる。
空は青いが、緑は一本も無く、
鳶が高い所を飛んでいて、きっと僕が
倒れるのを待っているんだと思った。
道路標識はあるが、ここ数日車が通った形跡はない。
また僕が出会ったこともない。
道は果てしなく続き、その先はかすむほど遠い山脈の麓へ
のびている。

一軒の空き家に入った。
見るからに空き家だと思っていたその家には女が一人いた。
「水を飲む?それとも旅をやめる?」
女に聞かれて僕は戸惑う。
水を飲むことと旅をやめることは同じなのか?
僕はしかし誘惑に負けて「じゃあ水を」と言ってしまう。
女はコップ一杯の水を持ってくる。
右目がなくなっている。

その目はどうしたんだ?

女は笑っている。
僕もそれ以上気にしない、気にならない。
翌日も翌日も僕は水を飲んだ。
女の体の一部がどんどんなくなっていって、
声だけになる。
「水を飲みますか?」
僕は最後の水を飲んだ。
その時誰かが部屋に入って来た。
若い女だった。
僕は言う、言うべき言葉を知っている。
「水を飲む?それとも旅をやめる?」
そうだ、水が欲しいだろう?
しかし女は言った。
「こんなところで水は貴重だろう。
私は自分の水を持っているからいいよ。」

その瞬間僕は水になって弾けた。
水は乾いた土にすぐに染み込んでなくなってしまう。

by trash-s | 2012-08-21 00:23 | 夢日記