2082.おや、突然雨が降ってきたよ

こう暑いと何もかもやってられない。
僕はリッチーの診療所に行く。
あそこは冬はストーブが暖かく、
夏はクーラーのきいたいい場所だ。
しかも年がら年中、人が少ない。
途中の八百屋さんで良さそうなスイカを購入した。
せめてもの手みやげだ。
やや誤算だったのはその重さだったが。

道すがら、夏はこんなに暑かったかな、と考える。
子供の頃はもっと涼しかったような気がする。
けれど子供の頃の方が僕の熱量は大きく、
暑さが気にならなかっただけかもしれない。
熱量は、いずれ失われるものだ。
後は冷めて行くだけだ。
体も、心も。

横断歩道の向こうに汗を拭くサラリーマンの姿。
今は夏休みで、スクールゾーンに小学生の姿も無い。
「13:12」
デジタル腕時計の数字がそう読めた。
ひどいな、本当にひどい暑さだ。

鼻を通る空気がひんやりとしていて僕は
自分が屋内にいることに気がついた。
診療所の中はエアコンが効いている。
古い作りの建物で窓が少ない。
それでより涼しく感じる。
僕はスイカを大事に抱えていた。
スイカは人肌のように暖かさを放っている。
「13:13」
デジタル腕時計の数字は示している。

僕は何かおかしいなと思いながら何も思いだせない。
記憶はいずれ失われていくものだ。
その過程などいつまでも憶えていられない。
体や心から失われても、どってことないだろう。

by trash-s | 2013-08-21 21:31 | ある日の出来事