人気ブログランキング |

2083.人の目は簡単に濁らない

八月の終わりに僕は食べたものを全て吐いて
路上に座り込んでいた。
道行く人は誰も僕の顔も見ない。
普通の人は僕なんか見ない。
僕も今日みたいな日じゃなかったら、僕のような人は見えない。
関わり合いたくないものにであったら、
それはフィルタリングされるものだ。
僕のようなものが見えるとしたら、よっぽどのお人好しか
僕にとっては悪意でしかない意思を持った者だ。
特にこんな繁華街では。
「大丈夫ですか」
綺麗な声が頭の上から降って来る。
メガネを掛けた、長い髪の女性が中腰で僕を見下ろしていた。
優しそうな顔、善意に満ちた笑顔。
あり得ないな、あり得ないだろう。
そう分かっていて、僕は彼女の手を借りた。
そしてホテルに行って、眠った後、
財布の中を全部取られた。
しかし残念だっただろうな。
僕は財布にはゴミしか入れてないからな。
僕の趣味は財布作りで、明らかな偽札や、
偽造カード、模倣ポイントカード、なめねこみたいな免許証、
そんな物しか入ってない。
くしゃくしゃになったレシートは友人からわざわざもらって入れている。

明日僕は彼女を見ることになる。
汚いビルの裏手で、薄い派手なドレスを着て
タバコを吸ってる。
その左頬には殴られた跡が残ってる。

by trash-s | 2013-09-01 00:34 |