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2092.遺書

雪が降り始めた。
天気予報ではそんなこと一言も聞いてなかったが、
またきっと僕が聞き損ねたんだろう。
僕はいつもぼんやりと何かを聞き逃している。

遺書を書くのは何度目だろうか。
死ぬ気もないのによく書いたものだ。
書くときはこれが最後といつも思ってる。
この先はないといつも考えている。
始めは鉛筆で書いた。
次は何で書いたかな。

もうそろそろ行ってもいいと思うんだ。
もう誰も会いに来てくれなくなったし、
誰にも会いに行けなくなったし、
ただここで朽ちていくだけなんだと思うんだ。
残せるだけのものは残したと思っているし、
それを見た子供たちが迷う事も無いだろう。

ここには雪は降らない。
僕は冷たくなった指でボールペンを動かしながら、
この遺書を書いている。
大きな木の下に、雪は降り積まない。
傘のような葉の向こうに、スローモーションのように
雪がふり続けている。
向こうの景色は見えない。
見えなくていいんだ。
もうここから景色は見えなくていい。
僕の道はここで終わる。







何も聞こえない?
何か聞こえる?
誰かが楽しそうにしている声が
聞こえる。

by trash-s | 2014-01-01 01:11 | 事の始め