2106.温かな背中

チャイムが鳴っている。
4限の始業チャイムだ。
僕は少し冷えた風の通るベンチで動けなくなっている。
ここは陽当たりがいい。
僕の正面から当たる日差しが風の寒さを和らげる。
それから背中。
僕と背中あわせに座ったまま居眠りをしてしまったヒナタさんがいる。
赤いフチの眼鏡の奥の瞼はしばらく開きそうにない。
かすかな寝息、花のようないい香り。

「昨日は徹夜だよ」
徹夜とは思えない溌剌とした表情でヒナタさんは言った。
僕は、そうですかと簡素に返した。
「…なにがあったのか聞かないのかい?」
聞かなくても喋るつもりなんでしょう?
「あ、そういうこと言うんだ。じゃあ喋らない」
そのまま僕の背中を背もたれにぷいとそっぽを向いた。
しばらくしたら喋るんだろうと思っていたら
ヒナタさんはそのまま夢の世界に行ってしまった。

by trash-s | 2016-01-13 15:11 | ヒナタさん