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2109.もうどこにもいない

眠れない夜には僕の頭を抱えて一緒に眠ってくれた。
眠れない理由はいくら聞かれても答えられなかった。
僕によくわからなかった。
「晴はいつも考えすぎるから」
雫は呆れたように笑う。ため息を交える。
細い指が僕の左顎に触れる。冷たい指はすぐに温かくなる。

そこにいたのは彼女だった。
彼女はそこにいた。
確認しなくてもわかっていたことを
わざわざ確認しないと眠れなくなったのはいつからだろう。
僕が見ているように彼女が僕を見ているわけじゃないって知ったから?
幼馴染に恋をするわけないって僕は考えていたのに?
じゃあ僕らはなんだったんだ?
僕はどこかで雫とはきょうだいのように断ち切れない何かがあると信じていた。

「私がいなくなったら悲しい?」
あの日の問いは僕の想像の範疇外だった。
僕は答える。
雫がいなくなっても、僕はちゃんと眠れるよ。
雫がどこかで誰かと眠っていると思えば。

それから数日が経ち、雫はこの世界のどこにもいなくなった。

by trash-s | 2016-01-16 16:06 | ハルくん